はじめに

三重県四日市市周辺の猫好きさんのための情報ポータルサイト「GATO ACORDE」を運営する私たちが、全国の先進事例を学ぶべく、殺処分ゼロを早くから実現している「熊本市動物愛護センターハローアニマルくまもと市を訪問しました。

この訪問は、単なる施設の視察ではなく、人と動物が共生する社会の未来を考える貴重な機会となりました。

プロフィール

熊本市動物愛護センター(愛称:ハローアニマルくまもと市)
2002年(平成14年)1月に熊本市動物愛護推進協議会が設立され「処分数ゼロ」を目指し、旧動物管理センターから「動物愛護センター」に名称を変更。「動物を飼う人・飼わない人がともに心地よく暮らせる町、人と動物が共生できる社会」の実現を目指し、動物愛護の普及啓発、保護された犬猫の返還・譲渡等を行う行政機関。

基本情報

項 目内 容
名 称熊本市動物愛護センター ハローアニマルくまもと市
所在地熊本県熊本市東区小山2丁目11ー1
規 模敷地面積:10,729㎡、建物:管理棟、愛護棟、収用棟
開 館8:30~17:15(犬猫の見学・譲渡は10:00~12:00、13:00~16:00)
閉館日土日・祝日・年末年始
アクセス【車】駐車場10台有り
 ・熊本空港から約20分
 ・熊本ICから約10分
【バス】産交バス(中心市街地から)
 ・戸島行き「中山」バス停で下車、徒歩10分
 ・小山団地行き「小山団地」バス停で下車、徒歩10分
連絡先096-380-2153
SNS等https://www.city.kumamoto.jp/doubutuaigo/
https://www.instagram.com/kumamotocity_doubutsuaigo/
備 考ボランティアや寄付の受付

殺処分ゼロを目指して、20年の歩み

これまでの道のり
熊本市は2002年(平成14年)から殺処分ゼロを目指し、従来の”保健所”にあたる「動物管理センター」から「動物愛護センター(ハローアニマルくまもと市)」へと名称を変更しています。2014年(平成26年)には愛護棟を増設し、屋内猫飼育のモデルルームや研修室、治療室、トリミング室を新設するなど、施設の充実を図ってきました。

運営の体制
現在、市の職員約25名(うち獣医師約10名、トリマー資格所有者3名を含む)が日々の運営に携わっており、職員人件費を除く施設の維持費は年間約7,300万円(令和6年実績)となっています。

収容状況の現実 – 想定を大幅に超える収容

収容されている犬猫
訪問当日(2025年9月1日)の収容状況は猫95頭、犬74頭。特に猫については想定収容数35匹を大幅に超える95頭が収容されており、事務棟の会議室や愛護棟の小型犬舎、治療室の備品置き場まで活用せざるを得ない状況が続いていました。

犬については譲渡が思うように進んでおらず、収容されている多くが飼養に体力を要する大型犬や猟犬で、中には10年以上収容されたままの犬も少なくないとのことです。

変化する収容理由 – 高齢化社会の影響

収容される主な理由
従来は怪我をした犬猫の収容が主でしたが、近年は飼い主の高齢化に伴う収容が増加しています。飼い主が高齢で入院や認知症となり世話ができなくなったケース、集合住宅での孤独死に伴い警察から連絡が入るケースなど、社会の高齢化が動物愛護の現場にも深刻な影響を与えています。

引き取りについての取り組み

自助努力が原則
一方で、飼い主が健在でも引っ越し等の事情で引き取りを依頼されるケースについては、まずは飼い主自身による譲渡努力を重視する方針を取っています。自身の努力による譲渡活動の実績が2回以上必要で、最低限の取り組みとして地元紙(熊本日日新聞:県内シェア75.2%を誇る地元紙)のペット譲渡欄への広告掲載(3~4千円/回)と一定期間の募集を行うことが求められています。

安易に動物を手放すことを防ぎ、飼い主としての責任感を改めて促すための重要な取り組みだと感じました。

TNR活動への支援と災害への備え

熊本市が特に力を入れているのが「TNR活動」です。TNRとは、Trap(捕獲)、Neuter(不妊去勢手術)、Return(元の場所に戻す)の頭文字をとったもので、野良猫の無秩序な繁殖を防ぎ、一代限りの命を全うさせるための活動です。

充実した補助制度
熊本市では2022年4月より、飼い主のいない野良猫に対する不妊去勢手術費用全額を熊本市が負担する制度を開始。さらにノミダニ駆除やワクチン投与に関する獣医費用も市が全額負担するなど、TNR活動を積極的に推進しています。

譲渡活動は、熱心な動物愛護団体や保護猫カフェの運営者、そして多くの一般市民の協力によって支えられています。中には、事故などで重篤な状態の動物を自費で病院に連れて行き、治療費を全額負担してくれる団体もあり、そうした献身的な愛護活動の存在に、改めて感動を覚えました。

熊本地震の教訓
2016年の熊本地震では、自宅から飛び出した犬猫の引き取りが急増し、水道が使用できない期間は給水車から犬猫用の水を運ぶ苦労もありました。この経験から、大規模災害に備えた周辺自治体や保健所との連携強化の必要性を痛感したとのことです。いつ起きてもおかしくない南海トラフ巨大地震に対し我々も備えが必要です。

譲渡に向けた取り組み

譲渡条件
譲渡に関しては、動物たちが二度と不幸な目に遭わないよう、厳格な条件が設けられています。

65歳以上の方や単身世帯の場合、緊急時に動物の世話を代行してくれる「後見人」が必須となります。これは、飼い主の身に何かあった際に動物が再び行き場を失わないための、大切なセーフティネットです。

譲渡費用自体は無料ですが、犬については登録料および狂犬病注射料として各3,000円が必要となります。また、全ての譲渡希望者には、飼育に必要な知識や責任を学ぶための「譲渡前講習会」の受講が義務付けられています。さらに、引き取られた全ての犬猫にはマイクロチップが埋め込まれる処置が施されており、万が一迷子になった際にも、飼い主の元へ戻れるよう配慮されています。

愛護センターの施設案内

屋内猫飼育モデルルーム

 室内でも猫が十分快適に暮らせるように、上下運動が可能なキャットタワーや隠れられるスペースを配置。訪れた人が、室内飼育のイメージを具体的に描けるよう工夫されています。

愛護棟犬舎&猫舎

 犬舎は、1頭ごとに0.5平方メートルほどの空間が確保され、中の様子が常に確認できるガラス戸になっています。衛生管理を徹底するため、扉が2箇所あり、動物を安全な場所へ誘導してから清掃ができる仕組みです。猫舎では、市販のケージを使い、各ケージにトイレと水、フードを設置し、1〜2頭ずつ個別に保護されています。

研修室

 TNR活動を啓発するための講習会や、犬の譲渡を希望する人向けの譲渡説明会が定期的に開催されています。

治療室

獣医師が常駐し、収容された動物の健康管理や、譲渡前の不妊去勢手術を行うための手術台やレントゲン装置などが備えられています。

トリミング室

保護されたばかりで汚れている動物のシャンプーやトリミングを行い、衛生状態を改善しています。見た目をきれいにすることで、動物たちの個性や可愛らしさが引き立ち、譲渡につながりやすくなるという重要な役割も果たしています。

収用棟(非公開)

一般には公開されていないエリアで、新しく保護された動物たちが、感染症にかかっていないかを確認したり、心身の状態を整えて譲渡可能になるまでの期間を過ごすための場所です。

~ 編集後記 ~

編集後記

熊本市動物愛護センターの訪問を通じて、殺処分ゼロという理想に向けた現場の努力と、高齢化社会や災害対応など新たな課題への対処が求められる現実を目の当たりにしました。九州自動車道熊本ICから約10分という立地の良さも含め、全国の動物愛護センターのモデルケースとして、今後の取り組みにも注目していきたいと思います。最後に、当日丁寧にご対応頂いた愛護センターの小田様には大変感謝致します。

熊本市動物愛護センターの取組は書籍でも紹介されています。興味ある方は本を手にとってみて下さい。
殺処分ゼロ-先駆者・熊本市動物愛護センターの軌跡(三五館)」藤崎童士
ゼロ!熊本市動物愛護センター10年の闘い(集英社文庫)」片野ゆか著