三重県鈴鹿市にある動物愛護団体「ムック王国」。今回は、代表の桜井むつみさんと、シェルター長の葛西さんにお話を伺いました。殺処分ゼロを目指し、一匹でも多くの命を救うため、日々奮闘されているムック王国の活動について、詳しくお伝えします。

| 項 目 | 内 容 |
|---|---|
| 団体名 | 一般社団法人 動物福祉 ムック王国 |
| 代表者 | 桜井むつみさん |
| 設立年 | 2015年 |
| 里親会 | 隔月第1土曜日 10時~12時、毎月第2・第4日曜日11時~14時 |
| 場 所 | 【隔月第1土曜日】ペットライフ四日市(四日市市室山町652-1) 【毎月第2日曜日】ビレッジハウス笹川 中央第一集会所(四日市市笹川6丁目18-1) 【毎月第4日曜日】MEGAドン・キホーテUNY鈴鹿店3F(鈴鹿市南玉垣町3628) |
| 問合せ | ムック王国のホームページ 里親募集中のねこ達の情報や里親会・イベント情報 ムック王国ツィート ムック王国YouTube |
活動の原点にある、忘れられない記憶
設立のきっかけ
iyコーギー:
本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます!ムック王国の皆様の活動について、お話を伺えることを楽しみにしております。
桜井さん:
こちらこそ本当にありがとうございます。精一杯、私たちの思いをお伝えできればと思います。よろしくお願いいたします。
iyコーギー:
では早速ですが、まずムック王国を立ち上げられたきっかけから教えてください。
桜井さん:
小学校3年生の時の出来事なんですが下校中に軽トラックに乗った見知らぬおばさんが、可愛い子犬を2匹「あげる」と言って置いていったんです。あまりにも突然で、私たちも戸惑いましたが、その場にいた皆でジャンケンをして、勝った私と友達で1匹ずつ飼うことになりました。私の家ではその子を「ラリー」と名付け、育てることにしました。
次の日、学校で友達に「ワンちゃんどうしてる?」と聞くと、その友達の親御さんは「飼えないから」と、子犬を保健所に連れて行ってしまったそうなんです。当時の私は、保健所がどういう所か知らなかったので、「保健所って、どういうところなの?」と親に尋ねてみました。親からは「犬や猫を殺す所」と教えられ、子ども心にその言葉が深く突き刺さりました。ラリーの姉妹である子犬が、殺されてしまったという事実を初めて知り、世の中にはそんな悲しい仕組みがあるんだと、大きな衝撃を受けました。その瞬間から、私は「飼えない子が殺されることのない世の中にしたい」と強く願うようになったんです。

iyコーギー:
小学校3年生の時の出来事が、その後の活動の大きな原動力になったのですね。
桜井さん:
そうなんです!それ以来あの時の出来事が、今もずーっと忘れられなくて。私の活動の根底にあります。
重症な子が保護されると寝ないで看病したり、睡眠を削って活動したりしてしまうので、周りから「どうしてそこまでするの?」と言われることもありますが、小学校3年生の時のあのショックと…『そこに命があるから助けたい!』と思うんです。
iyコーギー:
その後、すぐに団体を立ち上げられたのですか?
桜井さん:
いいえ、すぐではありません。最初は様々な動物愛護団体さんの活動を、できる範囲で手伝うことから始めました。団体に寄付をしたり、里親会のお手伝いをしたり、譲渡会前の子犬や子猫たちを一時的に預かる「預かりボランティア」をしたりという形で関わらせていただきました。

しかし、その過程で懸命に活動されている代表の方々が、次々と活動を停止せざるを得なくなる現実を目の当たりにしました。その原因の多くは、病気や障害を持つ子たちのケアに追われ、他の猫たちの譲渡活動まで手が回らなくなってしまうことでした。最終的には、数十匹の猫たち、特に保護が必要な子たちが取り残されてしまう状況を見て、「この活動を止めてはいけない」という思いが強くなりました。
iyコーギー:
そうした経験を経て、団体を立ち上げようと決意されたのですね。
桜井さん:
はい。「みんなで協力して猫たちのお世話ができる施設があれば、一人の負担が減り、活動を継続できるのではないか」また、個人での活動では社会的な信用を得にくいという問題も感じていましたので、より多くの支援を募るためには、団体として活動を掲げることが重要だと考え、ムック王国を立ち上げることにしました。当初、行政との連携は非常に難しく、保健所からの猫の引き出しも困難な状況でしたが、粘り強く働きかけることで、少しずつ協力体制を築けるようになってきたんです。

iyコーギー:
様々な経験と深い思いが込められているのですね。では、「ムック王国」という団体名には、どのような由来があるのでしょうか?
桜井さん:
団体のロゴをデザインしてくれた「ドット9(.9)」という作家さんのニックネームが「9ちゃん」だったことから、「ク」という音をいただき、私の名前が「桜井むつみ」なので、「ム」を合わせて「ムック」となりました。検索した時、埋もれずに、覚えやすい名前が良いと考え、一度聞いたら忘れにくい「ムック王国」という名前にしました。

保護活動の課題と行政との連携
iyコーギー:
ムック王国には、どのような経緯で保護される猫が多いのでしょうか?
桜井さん:
一番多いのは、個人の方から子猫が生まれたという依頼の電話ですね。
お庭で餌をあげていた猫が子猫を産んでしまって・・・という相談がたくさん来ます。
他には、飼い主さんが高齢で亡くなられて、猫がお部屋に取り残されてしまい近隣の方が連絡してくださる場合もあります。また、過去には保健所から猫たちを引き出すこともありました。
ただ、以前の保健所は、「犬や猫を殺すところ」という認識が強く、殺処分の情報開示もほとんどされず、多くの命が救えない状況でした。私たちは、行政に粘り強く働きかけ、ようやく保健所での殺処分が減り、連携して猫を救えるようになってきたところです。

iyコーギー:
保護される猫たちは、野良出身、飼育放棄、多頭飼育崩壊といった割合や傾向はありますか?
桜井さん:
保護される猫の約7割は野良出身です。多頭飼育崩壊や飼い主による飼育放棄も大きな問題で、特に近年は、独居老人の方が亡くなり、部屋に残された猫たちが保護されるケースが増えています。
iyコーギー:
多頭飼育崩壊の現場は、どのような状況なのでしょうか?
桜井さん:
多くの場合、「最初はオスとメスが1匹ずついただけなのに…」というところから始まります。猫は繁殖力が非常に高く、半年で子猫が産まれ、その子猫がまた半年で親になり子を産む、というサイクルで、1年後には爆発的に増えてしまうんです。1匹のメス猫が一度に5〜6匹の子猫を産むので、もし3匹のメス猫が現場にいれば、一度に15匹もの子猫が生まれる計算になります。その数に手術費用が追い付かず、最終的には飼い主さんがお手上げになってしまうんです。
iyコーギー:
想像を絶するスピードですね!!
心に残る保護猫たちのエピソード
iyコーギー:
印象に残っている保護猫のエピソードがあれば、ぜひお聞かせください。
桜井さん/葛西さん:
たくさんありますが、いくつかご紹介させてください。
獣に頭や腰を噛まれて、上下の顎が左右に半分ズレてしまい頭蓋骨が陥没し、てんかん発作を頻繁に起こしていた茶トラ猫の「チャチャ」を保護した時のことです。複数の動物病院からは「もう助からない」と言われていました。でも私は1滴ずつミルクを与え、必死に看病しました。現在は元気になりましたが、脳に障害が残ったため、他の猫と争わない優しい性格になりました。

TNRをしようとしたキジトラの「ギャオ君」は、捕獲器の餌をおかわりするほど飢えていて、足が濡れていたのが気になり、去勢手術を延期したんです。そしたら自己免疫疾患という難病だと診断され皮膚を縫ったり移植をしたり何度も手術を繰り返し入院で高額な費用がかかりました。その後は腎臓病も発症し預かりさんの家で静かに暮らし、つい先日8/30にムック王国のメンバーさん宅からお空に旅立ちました。
沢山のメンバーさんにお花を手向けていただき見送りました。ギャオ君はムック王国のメンバーさん宅で亡くなる瞬間まで幸せだった。と感じています。

猫の習性を熟知し、根気強く猫の行動を読み解きながら、巧みな方法で脱走した猫を捕獲するエピソードも多くあります。例えば、里親の家から脱走した猫「ドラえもん」を、目撃情報と缶詰を使った誘導、そして捕獲器で無事に捕獲したこともありました。
昨年は赤ちゃん猫だけで100匹の猫を一時的に保護した時期があり、赤ちゃん猫の育成には想像を絶する手間と労力がかかりました。生まれたての子は、哺乳瓶の乳首が吸えずミルクを飲めないので、シリンジで1滴ずつベロにミルクを垂らして唾液と一緒に飲ませるんです。根気よく。夜通しあげ続け2晩、3晩寝ずに育てることもあり「この子が死ぬか私が死ぬか」という思いで育てた子がいっぱいいます。

これは私の原点とも言えるエピソードの1つですが、猫風邪が蔓延している地域で、野良猫の餌やりをしている方がいました。その方の家の庭には常に20匹以上の大人の猫がいて、生まれてくる子猫の多くは猫風邪にかかって目が見えなくなっていました。

古家の朽ちた網から床下に入り込んでしまった猫たちを助け出すため、大家さんの許可を得て、大工さんに畳と床板を外してもらい、床下まで潜って猫を捜しました。様々な方法で猫を外に誘い出し、すべての猫が外に出たと思い、床を蓋することになったとき、念のためにもう少し待つことを提案しました。外の猫が中に入らないように蓋をした状態で、床下に水とご飯を置いて様子を見ることにしました。もし餌がなくなっていれば、まだ床下に猫がいることになります。すると、実際に餌がなくなっており、まだ床下に猫が残っていることがわかりました。もしこの確認をしていなければ、何匹かの猫が床下に閉じ込められて死んでしまっていたかもしれません。
iyコーギー:
どのエピソードも、命の尊さ、そして保護活動の厳しさを感じさせられますね。
桜井さん:
でも、どのエピソードも、決して私一人じゃ出来なかったことです。
野良猫を保護して手術につなげる捕獲チームのメンバー、自宅で猫を温かく迎え入れてくれる預かりボランティアさん、シェルターで日々お世話をしてくれる当番ボランティアさん、そして幼い子猫を睡眠を削って育ててくれるミルク・離乳食ボランティアの皆さんがいます。

また、動物を直接世話することはできなくても、フリーマーケットで活動を支援してくださったり、ご寄付をくださったりと、様々な形で多くの方が関わってくださっています。
一人ひとりの力が集まることで、一つの尊い命が救われています。ご協力くださる全てのメンバー、そして里親になってくださる方々がいなければ、保護活動は継続できません。いつも支えてくださる皆様には、心から感謝の気持ちでいっぱいです。
譲渡の条件と支援について
譲渡条件・費用
iyコーギー:
譲渡条件や必要な費用についても教えていただけますでしょうか?
桜井さん/葛西さん:
具体的な条件は、私どものウェブサイトにも掲載しておりますが、いくつか重要な点があります。
- 最後まで責任を持って見送れること
- ペット飼育が可能な物件に住んでいること
- 家族全員が猫を飼うことに同意しており、猫アレルギーの心配がないこと
譲渡費用について 譲渡費用は、保護猫にかかった初期医療費(ノミダニ駆虫、エイズ・白血病検査、ワクチン接種など)をご負担いただいています。ワクチン接種費用については、4回目以降は団体が負担します。

※未成年者/単身者/サポートされる方のいないご高齢者のみのご家族への譲渡は行っておりません。
(高齢者の方で、後継人がいる場合はご相談ください)
譲渡の流れ
1.里親会や里親サイト、お問合などでご連絡をいただく
2.ムック王国担当者からお電話いたします
3.ムック王国担当者と面談
4.トライアル(お試し飼育)
5.譲渡金をお支払いいただく
6.正式譲渡
譲渡後のフォロー
iyコーギー:
譲渡された後のアフターフォローは、どのようにされていますか?
桜井さん:
里親さんとは、LINEなどで連絡を取り合っています。健康に関する相談や猫の行動に関する相談、新たに猫を迎えたいというご希望があれば、それに合わせたアドバイスも行っています。

ボランティアや寄付など、支援に参加する方法
《ボランティア》
・預かりボランティア: 保護した猫を一時的に自宅で預かる。
・シェルターでのお手伝い: シェルターで猫の世話(清掃、ご飯の準備など)を手伝う。
・送迎ボランティア: 猫の動物病院への送迎や、譲渡会会場への搬送を行う。
・捕獲ボランティア: 野良猫を捕獲する。夜間の作業になることもある。
・情報拡散: 里親募集のポスターを貼ったり、SNSで情報を拡散する。
《寄付》
・現金/PayPayでの寄付、ゆうちょ銀行への振り込み
・Amazonの「欲しいものリスト」から、必要な物資を直接購入して送付
・チャリティイベントへの参加 (マルシェ、ヨガ、占いなど)

今後の活動や目標
iyコーギー:
今後の活動や目標についてお聞かせください。
桜井さん:
私たちは、建設したシェルターを活動のゴールとせず、ここを拠点として、より多くの猫を救いながら最終的には、TNR活動とTNTA活動をさらに推進し、保健所での殺処分を完全に廃止すること、そして将来的には、野良猫の去勢・避妊手術が行政によって無償化されるよう働きかけていきたいと考えています。
iyコーギー:
社会問題への対応も視野に入れているのですね。
桜井さん/葛西さん:
孤独死や多頭飼育崩壊といった社会問題に起因する保護案件に対し、より包括的な支援ができる活動を目指します。
独居老人が亡くなられて猫だけが残されてしまい、行政から連絡を頂くこともあります。高齢者がペットを飼うことは、確かに癒しになると思いますし、動物を大切にされる気持ちもよく分かります。しかし、その方が亡くなった時に、大切にされてきた動物が残されてしまうという現実があります。だからといって、飼いたいと願う高齢者に「飼わないでください」と言うのは、あまりにも残酷です。
そこで私は、「一緒にボランティアをしませんか」と提案しています。病気の子や、なかなか引き取り手が見つからない子を一時的に預かってもらうのです。もし何かあった場合には、猫を私たちが引き取りますので、責任を一人で抱え込む必要はありません。

この方法には、猫が安全に過ごせること。私たちが定期的に連絡を取ることで、預かってくださっている高齢者の安否確認にも繋がるという2つの利点があります。孤独死を心配される高齢者の方も、この繋がりを喜んでくださることが多いです。私たちが「どうしていますか?」と日々の様子を確認しに行く良いきっかけになるのです。このような仕組みが、社会に浸透していくことを願っています。
里親希望の方へのメッセージ
里親を希望される方へ
iyコーギー:
最後に、保護猫の里親を希望される方々へのメッセージをお願いします。
桜井さん:
ペットショップの猫も保護猫も、命に違いはありません。それぞれの猫には個性があり、唯一無二の存在です。ぜひ、ご自身やご家族にぴったりの猫を見つけて、家族として迎え入れていただきたいです。特に、年配の猫でも、歳を重ねた猫にこそ、愛情を注ぎたいと言ってくださる温かいご家庭を求めています。
猫を家族に迎え入れたら、いつか別れが来ることを覚悟し、その命が尽きるまで責任を持って看取ってあげてください。保護猫を家族に迎えることは、猫だけでなく、ご家庭にもたくさんの幸せが訪れます。責任感と愛情を持って終生飼育ができる里親さんになっていただきたいです。

お問い合わせ
「動物福祉 ムック王国」では、保護猫の譲渡、一時預かりボランティア、支援物資の寄付を随時募集しています。
譲渡会開催日・場所: 【隔月第1土曜日】ペットライフ四日市(四日市市室山町652-1)
【毎月第2日曜日】ビレッジハウス笹川 中央第一集会所(四日市市笹川6丁目18-1)
【毎月第4日曜日】MEGAドン・キホーテUNY鈴鹿店3F(鈴鹿市南玉垣町3628)
SNS: ブログ、Instagram、X(Twitter)で最新情報を発信中
ムック王国のホームページ
里親募集中のねこ達の情報や里親会・イベント情報
ムック王国ツィート
取材を終えて
ムック王国様の取材を通じて、動物保護活動の厳しい現実と、それに立ち向かう人々の強い意志を肌で感じることができました。一匹でも多くの命を救うため、自らの時間や体力を削りながら活動を続ける桜井さんの姿は、まさに命の恩人。行政やボランティア、地域住民との連携の難しさに直面しながらも、ひたむきに活動を続ける姿勢に感銘を受けました。
お話を伺ったのは、保護活動に強い情熱を持つ桜井さんと、シェルターの管理を担う葛西さん。お二人の熱意と団体を支えるメンバーの方々が、多くの命を救っていることを改めて実感しました。
このブログ記事を読んで、ムック王国さんの活動に興味を持った方は、ぜひ公式ウェブサイトやSNSをチェックしてみてください。ボランティアや寄付など、様々な形で支援することも可能です。
