今回は猫の不妊手術専門の動物病院「猫院」を2022年に開業された駒田先生に、お話を伺いました。地域猫活動の最前線で活躍する先生の情熱と、獣医療の奥深さに迫ります。
駒田 哲也(こまだ てつや)先生
三重県四日市市出身。「コマ動物病院」副院長。「猫の森」「夢見月の猫」代表。
1990年「コマ動物病院」開院。
2022年「猫院」(三重県初の猫不妊手術専門病院)開院。
四日市市動物愛護推進員。
三泗開業獣医師会会長。
四日市わんにゃん会議代表。
地域猫に優しい動物病院「猫院」の挑戦
獣医師になった理由やキッカケ
iyコーギー:
本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、
先生が獣医師になられた理由やキッカケを教えてください。
駒田先生:
恥ずかしい話なんですが、あまり人に言いたくないというか(笑)
中学の時に『野生のエルザ』を読んだのがきっかけなんです。

みなしごのライオンを人間が育てて、最後野生に返すっていう、昔アフリカであった事実を描いた本なんですけど。あれを読んで「こんな仕事いいな、こんなことやりたいな」と思って。当時は藤原英司さんという方が和訳をされていたので、直接手紙を書いたんです。「僕、こんなことしたいんだけど、どうしたらやれますか?」って。中学1〜2年生ぐらいだったと思います。
iyコーギー:
中学生で直接手紙を。すごい行動力ですね!
駒田先生:
すると藤原さんから返信が来て、「難しいと思うけど、獣医師になったら多少確率は上がるかもしれないよ」って書いてあったんです。それを見て「じゃあ獣医になろう!」と思いました。それが中学の時で、その時からずっと獣医になろうと決めていました。結局、野生動物関係の仕事はしなかったんですけど、それが獣医師を目指すきっかけになりました。

iyコーギー:
そうだったんですね。感動的です。
駒田先生:
僕自身は全然覚えてないんですけど、最近でも高校の同級生とかが猫を連れてきたりすると、
「駒田君って高校の時から言ってたよね」とか、「獣医になるって言ってたよね」って。
皆、知ってたんです(笑)
iyコーギー:
皆が先生の夢を知っていたんですね!
きっとその頃から駒田先生が獣医師になるのを皆さん応援していたんですね。
駒田先生:
でも、僕が入った高校からは獣医になる生徒が少なかったようで、進路指導では「うちの高校から獣医になるやつなんて、そんなにいなくて分かんないから、あとは自分で調べろ」って言われまして。
全然進路指導してくれなかったですね(笑)。
iyコーギー:
進路指導の先生がそんなことを。生徒に丸投げだったんですねー(笑)
今までの動物飼養経験・エピソード
幼い頃から変わらない動物への思い
iyコーギー:
今までの動物飼育の経験やエピソードについて教えてください。
駒田先生:
親が飲食店をやってたので、小さい頃はほとんど動物を飼ってないんです。でも動物は好きで、小学校の夏休みの課題は全部昆虫採集でした。小学校の卒業文集にも「自然動物園か自然植物園をやりたい」って書いた記憶があります。やはり元々、動物が好きだったんでしょうね。自分で飼えないから、そういう渇望があったんだと思います。
iyコーギー:
幼い頃から変わらない動物への思いがあるんですね。
駒田先生:
大学を出てからは猫がずっといました。
ひと頃は盲導犬の引退犬を4頭お世話していました。最後の子は盲導犬の活動中に病気が見つかり、1年ほどで引退したのですが、またいつ悪くなるか分からないからと、うちの動物病院で8年過ごしました。
その頃、うちで「猫町文庫」というドッグカフェをやってたんですが、その子がよくウロウロしていましたね。
ダックス犬と「シマ」というキジトラの猫もいました。
iyコーギー:
「猫町文庫」私もランチで時々、お邪魔していました!ワンちゃんや猫店長のしまちゃんも覚えています!ドッグカフェもされて、いろんな経験をされてきたんですね。
駒田先生:
そのドッグカフェを始めたのは、うちの次男に「カフェのウエイターをしてもらおう」という思いからでした。で、しばらくして獣医師になった長男が「後を継ぐ」と言ってくれたので、「それなら待ち合い室を広げなきゃ」ということになりカフェを閉めることになったんですが、ちょうどその頃、病院の向かいの土地が売りに出たんですよ。高かったんですが、「買わなきゃしょうがない」と思って。結局、その土地に新しく猫カフェも作って。次男が将来もやっていけるような仕事にしたいという気持ちもありましたね。

iyコーギー:
このタイミングで向かい側の土地が売り出されるなんて!
駒田先生:
まさに「めえっちゃいいタイミング」でした(笑)
病院の特徴や得意分野、こだわりなど
三重県初の猫不妊手術専門病院
iyコーギー:
病院の特徴や得意分野とか、こだわりがあれば教えて頂けないでしょうか?
駒田先生:
病院の特徴は、TNR、つまり猫の不妊手術専門です。全国的に見るとちらほらありますが、東海地方では珍しく、岐阜だったかな・・・に1件ある程度です。

iyコーギー:
そうなんですね。なぜ不妊手術専門にされたのですか?
駒田先生:
他の病院はいろいろと大変な症例を抱えていてお忙しい。正直TNRをしている余裕がないんです。野良猫をいつ捕獲出来るかわからないので、手術の予定も入れられないですし。
その点、僕は臨床を引退したので時間に融通が利きますし、まぁそれなりに野良猫使いのノウハウも持っているので、老兵が他の病院にご迷惑をお掛けしないようにしつつ地域獣医療に貢献したいなと。
とはいえ、やってみると噛まれたり引っ掻かれたりすることがしょっちゅうで、1週間手を使えないなんてこともあります。普通の病院の獣医師がそうなったら、診察ができなくなって大変ですよね。
いや、本当は僕も大変なんですけどね(笑)
iyコーギー:
その腕の傷は、野良猫との格闘の跡ですか!? 野良猫の手術は命がけなんですね。

駒田先生:
四日市の動物病院は割と仲がいいので、うちがTNRをやってると知ってみんな紹介してくれます。四日市市は不妊手術の補助金も出してくれるので、個人の人も自分の持ち出しが少ないから連れてきますね。
iyコーギー:
TNR専門ということですが、先生の得意分野もそこになるのでしょうか?
駒田先生:
そうですね。もう僕は現役を引退したようなものなので、みんなが手を出さないようなニッチな分野で、こそこそと生活させてもらっています(笑)。昔は獣医師もオールマイティーに何でもやっていましたが、今は専門分野を持つ若い獣医師が多いですからね。今の体力で昔のように何でも対応するのは難しい(笑)

iyコーギー:
不妊手術で、オスとメスではどちらが大変ですか?
駒田先生:
断然、メスの手術の方が大変です。オスは袋に睾丸を入れて引っ張り出して縛ればそれでおしまいですから。メスはお腹を切らなきゃならないし、見えないところから子宮を引っ張り出してこないといけない。手術時間自体はオスが10分程度、メスは20分程度ですが、麻酔や術後ケアまで含めると、オスは30分強、メスは45分程度かかります。妊娠している場合はその倍かかりますね。
iyコーギー:
妊娠している場合、胎児は助からないのですか?
駒田先生:
麻酔をかけた時点で、胎児にも麻酔がかかってしまうので助かりません。
子宮ごと摘出することになります。妊娠している猫は腹が減るから捕まりやすいという特徴もあって、2月3月は特に妊娠率が高いです。
iyコーギー:
手術後、猫はすぐに帰れるのでしょうか?

駒田先生:
大体その日のうちに帰れます。夕方捕獲された場合は夜に手術し、その日の夜に迎えに来てもらうか、朝まで預かって翌日迎えに来てもらうかのどちらかですね。
iyコーギー:
先生は不妊手術以外でも今もずっと現役で様々な手術をされているんですか?
駒田先生:
今は不妊手術専門なので、それ以外の手術は息子がやっています。
僕自身はもう注射のみで、注射を持って猫を押さえているだけですよ(笑)。体力的に昔のように何でも対応できないので、なるべく目立たないようにこそこそやっています。
うちの息子がやっていますが、彼も外科医としてかなり優秀ですよ。

iyコーギー:
料金体系についてお伺いしたいのですが、ホームページに料金を載せられているのは珍しいですね。
駒田先生:
そうでしょう? それも、ホームページに載せていいか問い合わせた時、だいぶ役所とやり取りがありました。結局は保健所が「載せていい」と認めましたが、変なところでがんじがらめなんです。
看板に値段を表示しちゃいけないとか、専門科目を表示しちゃいけないとか。不妊手術専門は最近OKになりましたけどね。

おススメする動物病院の選び方
治療の説明と選択肢を提示してくれる病院
iyコーギー:
駒田先生がおすすめする動物病院の選び方を教えてください。
駒田先生:
まずは、説明してくれる病院ですね。
そして、分からないことは「分からない」と正直に言ってくれる病院が良いでしょう。人間と同じように、獣医にも専門分野があるので、全てを知っているわけではありません。
iyコーギー:
確かに、分からないのに何でも「できます」と言われると不安になります。
駒田先生:
そうですね。それに、治療の選択肢を複数提示してくれる病院も大切です。例えば、がんになった場合、手術で取るのか、抗がん剤治療をするのか、あるいは何もしないという選択肢もあるでしょう。それぞれのメリット・デメリットを説明し、飼い主に選ばせてくれる病院が良いと思います。
iyコーギー:
飼い主が納得して選べるのが一番ですね。
駒田先生:
あと、自分の病院の得意・不得意を明確にしていて、必要に応じて他の病院を紹介してくれる連携があるところも重要です。四日市市の獣医同士は仲が良いので、うちも不得意な分野は他の病院を紹介しています。

社会貢献活動・これからの課題
愛護センター設立への思い
iyコーギー:
最後に社会貢献活動や、これからの課題などがあれば教えてください。
駒田先生:
私は「四日市わんにゃん会議」の代表を務めており、地域猫のTNR活動に取り組んでいます。毎年1回市長と話し合い、愛護センターの設立を訴えているのですが、なかなか進まないのが現状です。
ただ、ここ2年くらいで少しずつ話を聞いてくれるようにはなりました。愛護センター建設には多額の費用がかかるため、まずは市の不妊手術補助金制度の拡充を求め、メス猫への補助を増やすよう市長に強く働きかけました。
これは、わんにゃん会議の活動が実を結んだ形ですね
iyコーギー:
それは素晴らしい活動ですね!
わんにゃん会議の活動が、より広がることを期待します!
先生、本日は本当にありがとうございました。
駒田先生:
ありがとうございました。
「夢見月の猫」
最後に飼い主様のご事情で行き場のなくなった猫ちゃんを、飼い主さんに代わって終生お世話する施設
「夢見月の猫」の見学もさせていただきました。詳しくはコチラのページからご確認ください。



取材を終えて
駒田先生のお話は、獣医師という仕事の奥深さ、そして動物たちへの深い愛情に満ち溢れていました。特に印象的だったのは、ご自身のキャリアを振り返りながら語られた「ニッチな分野でこそこそやっている」という謙虚な言葉の裏にある、地域猫たちへの強い責任感と情熱です。
TNR活動の最前線で、獣医師として、そして市民として地域貢献に取り組む駒田先生の姿は、私たちに多くの示唆を与えてくれました。
※野良猫の手術は、人に慣れておらず触れることが難しいうえ、ノミやダニの寄生や激しい抵抗による危険が伴うため、多くの動物病院では受け入れを断るケースが少なくありません。